誕生日に、腕時計のサプライズ

時計というと、ブランドや性能にこだわって選ぶ人が多いのだろうが、自分はあまりそういうところに頓着して買うことがない。文字盤が読みやすくて、着け心地が良ければそれでよい。色や模様などのデザインはその時々で自分の好みがコロコロと変わる。シンプルなモノトーンのビジネスウォッチのようなものをほしい時もあるし、一時それを使いこんだら、次は針がナイフとフォークになってるようなレトロ可愛いものをつけたい気分になる。一つのデザインのものをずっとずっと使い込むということをしないので、リーズナブルな時計を使い切り感覚で買うことがほとんどである。
だが一度、なんの気の迷いだったのか、高価なアクセサリーウォッチが目に留まった。シルバーのブレスレット調のリストバンドに丸い文字盤には数字の代わりにキラキラしたビーズが埋め込まれている、実用品というよりは装飾品という要素の高い腕時計だ。普段使いなれないようなものだから余計に気になったのかもしれないが、とにかく、一目見てその時計のことが忘れられなくなってしまったのである。
当時まだ学生だったので、なかなかすぐに手が届くわけもなく、幾度となくその店を訪れては、商品ケースの中の時計を眺めてすごすご帰るというのを何度となく繰り返していた。貯金がたまったら買おうと思うが、それがいつになるかと考えて、その前に誰かに買われてしまったらどうしようかと戦々恐々としていたある日のこと。
友人と会う約束になっていて、約束の通り会って話などしたり、歩き回ったりなどした後のことである。不意に、友人が包装紙に包まれた細長い箱をどこからか取り出して、手渡してきた。何事かと思ってきょとんとしていたら、「箱を開けてみて」と言う。
言われた通り開けてみると、中からはなんと、自分がずっと店に行っては眺めていた、例の腕時計が入っていた。腕時計のことを聞いて知っていた友人が、誕生日のプレゼントにと贈ってくれたのだった。驚きと嬉しさでしばらく声が出なかったのをおぼえている。
それ以降、お気に入りのその時計をことあるごとにつけていたが、残念なことに意外に早く文字盤のビーズが取れてしまい、時計としての役目は早々と終えてしまった。
今となっては、携帯電話が時計代わりの現状だが、そろそろまた、使い勝手のいい腕時計でもつけたいなと思う今日この頃である。